外出先でスマートフォンのバッテリーが減って焦った経験、誰しも一度はあるのではないでしょうか。
そんなときに役立つモバイルバッテリーですが「いざ使おうとしたら全然充電が進まない」「本体の充電にもすごく時間がかかる」と感じる場面も少なくありません。
原因がわからないまま、何となく使い続けている方も多いのではないでしょうか。
この記事では、モバイルバッテリー本体やスマホの充電に時間がかかる理由について、具体的な原因とその見分け方をわかりやすく紹介していきます。
モバイルバッテリー本体の充電が遅くなる主な原因
モバイルバッテリー本体の充電が遅く感じられる場合、いくつかの要因が複雑に絡み合っていることが多いです。
代表的な原因を順に解説していきます。
ACアダプターの出力不足がボトルネックになる
結論から言うと、充電器の出力が不足していると、どれだけ高性能なモバイルバッテリーを使っても充電速度は上がりません。
その理由は、アダプターから供給される電力が少なければ、バッテリーが受け取れるエネルギー量も制限されるためです。
例えば、スマートフォンに付属していた古いアダプターは5V/1A程度の出力であることが多く、これは5Wの低出力に過ぎません。
そのようなアダプターで20,000mAhのバッテリーを充電しようとすると、理論上でも10時間以上かかってしまうのです。
急速充電に対応しているモバイルバッテリーであっても、アダプター側がそれに見合う出力を持っていなければ、その機能を活かせません。
よって、アダプターの性能を確認し、出力が15W~30W以上のモデルに切り替えることが有効な改善策です。
バッテリーの入力性能(IN)が低い機種を使っている
いくら高出力のアダプターを使用していても、モバイルバッテリー本体が対応していなければ意味がありません。
つまり、充電の遅さの原因がバッテリー側にあるケースも多いということです。
最近のモバイルバッテリーはPD(Power Delivery)やQC(Quick Charge)などの急速充電に対応しているものが増えてきましたが、古いモデルや低価格帯の機種では5V/2A(10W)までしか受け付けないものもあります。
このような機種では、どれだけ高性能なアダプターを使っても入力側で制限がかかるため、結果的に充電が遅くなるのです。
購入前に「入力:5V/3A」「18W入力対応」など、仕様をしっかり確認することが、後悔しないためのポイントになります。
使用している充電ケーブルの品質に問題がある
見落とされがちですが、充電ケーブルも充電速度に大きな影響を与えます。
いくらアダプターとモバイルバッテリーが急速充電に対応していても、ケーブルがその性能に追いついていなければ、電力が制限されてしまいます。
例えば、古いUSB-A to Micro-USBのケーブルでは最大でも10W程度しか流せません。
加えて、ノーブランドの安価なケーブルは内部の配線や導線の質が低く、電気抵抗が高くなりがちです。
さらに、ケーブルの長さが2mを超えるようなものだと、電圧降下が発生してしまい、結果として充電時間が伸びてしまいます。
短くて太い、PD対応のUSB-C to USB-Cケーブルを選ぶことで、充電時間を大幅に短縮できる可能性があります。
購入時には必ず「最大対応出力」や「PD対応」の表記を確認するようにしましょう。
古いUSB規格や非PDポートで充電している
モバイルバッテリーの充電が遅いと感じたとき、その原因が接続端子の規格にあることは意外と見落とされがちです。
多くの人は、USBケーブルで充電できている時点で問題ないと思いがちですが、実際にはUSBの規格によって充電速度に大きな差が生じます。
USB-AやMicro-USBは現在では旧世代の規格とされており、高速充電には不向きです。
これらは最大でも10W程度しか対応しておらず、PD(Power Delivery)に対応していないため、高出力のアダプターを接続しても、その恩恵を受けることができません。
特に、Micro-USBポートは構造上の制限もあり、発熱や物理的な摩耗も発生しやすいため、長時間の使用には適していません。
このような端子を使っている限り、どれだけ工夫しても充電時間の改善には限界があるのです。
もし充電にかかる時間を短縮したいのであれば、USB Type-CポートかつPD対応のバッテリーへ切り替えることをおすすめします。
大容量バッテリーはそもそも充電に時間がかかる
モバイルバッテリーの容量が大きければ大きいほど、多くの電力を貯めなければならず、それに伴って充電にかかる時間も長くなります。
これは単純な物理的関係であり、出力の高いアダプターや高性能なケーブルを使っていても、容量自体が大きければ一定時間は必要になります。
例えば、5,000mAhのモデルと20,000mAhのモデルでは、単純に考えて4倍の電力量を充電することになります。
それを10W出力のアダプターで充電する場合、前者が約3時間で済むのに対し、後者は10時間近くかかっても不思議ではありません。
このため、大容量バッテリーを選ぶ際には、「一度の充電で長持ちする」反面、「満タンにするまでに時間がかかる」という性質を理解しておくことが重要です。
急ぎの使用が想定されるなら、充電速度が速いモデルを選ぶことも検討材料になります。
本体内部やポートの劣化・汚れが影響する場合もある
充電が遅くなる原因には、見た目では判断しづらい内部的な問題も含まれます。
モバイルバッテリーは繰り返し使用されることで、内部のバッテリーセル自体が劣化していきます。
この劣化が進行すると、電流を効率よく受け入れられなくなり、充電にかかる時間が自然と長くなってしまうのです。
また、ポートの接触部分にホコリや汚れが蓄積している場合も、電流の流れが阻害され、結果として充電速度が落ちる原因となります。
特にカバンやポケットに入れて持ち運ぶ機会が多い人ほど、知らず知らずのうちにゴミが溜まりやすくなります。
このような場合には、エアダスターや綿棒でポート周辺を優しく掃除するだけで改善されることもあります。
ただし、無理に奥まで突っ込んで掃除しようとすると、かえってポートを傷める可能性があるため注意が必要です。
劣化が進んでいると感じた場合は、無理に使い続けず、買い替えを検討することも安全のためには重要です。
モバイルバッテリーからスマホへの充電が遅い原因
スマホをモバイルバッテリーで充電しているのに、思ったよりも進みが遅いと感じたことはありませんか?
この章では、その具体的な理由を詳しく解説します。
出力性能がスマホに合っていない
スマートフォンを素早く充電したいとき、モバイルバッテリーの出力性能が十分でなければ、それが足を引っ張ってしまいます。
なぜなら、スマホが必要とする電力量をモバイルバッテリーが供給できなければ、スムーズな充電は実現しないからです。
たとえば、スマホが18W以上の急速充電に対応しているのに、モバイルバッテリー側が5W出力しかできない場合、スマホはその低出力に合わせて充電速度を制限してしまいます。
これは、あたかも広いバケツに細いホースで水を入れているような状態で、結果として充電に時間がかかります。
出力性能の確認はモバイルバッテリー本体やパッケージ、メーカー公式サイトに記載されている「出力(Output)」欄を見ることで可能です。
効率良く充電を行いたいのであれば、スマホの仕様に合った出力のバッテリーを選ぶことが重要になります。
充電プロトコルの不一致で急速充電が無効になる
充電速度が上がらない原因の一つに、使用しているモバイルバッテリーとスマートフォンが異なる充電プロトコルを採用しているケースがあります。
充電プロトコルとは、モバイルバッテリーとスマホがどのように電力をやり取りするかを決めるルールのようなもので、これが一致していなければ急速充電は作動しません。
例えば、スマホがUSB Power Delivery(PD)に対応していても、モバイルバッテリーがQuick Charge(QC)しか対応していない場合、両者は急速充電の交渉が成立せず、通常の低速モードでの充電になります。
これはまさに、お互いの言語が異なるため会話が成立しないのと同じ状況です。
こうした場合、ユーザー側には異常とわかるエラー表示は出ないため、ただ充電が遅いという結果だけが見えてしまいます。
急速充電を確実に行いたいなら、スマホとバッテリーの両方が同じ充電規格に対応していることを確認することが大切です。
ケーブルの規格や定格が低く、電力が制限される
スマホの充電が遅くなるもう一つの要因として、使っているケーブルの性能が不十分である場合があります。
多くの人はアダプターやバッテリーばかりに注目しがちですが、実はケーブルも充電速度に大きく関わっています。
例えば、見た目が同じUSB Type-Cのケーブルでも、内部の構造によって対応できる電流値やワット数は大きく異なります。
古いケーブルや安価な製品では、最大で2A程度までしか電流を通せず、本来可能な急速充電の性能を大きく損なってしまうことがあります。
このような場合、モバイルバッテリーもスマホも急速充電に対応しているのに、ケーブルだけが足を引っ張るという残念な結果になりかねません。
高出力充電を行う際は、60W以上に対応したPD認証ケーブルなどを選ぶことが、快適な充電体験につながります。
スマホを操作しながら充電していると進みにくい
スマートフォンを使いながらモバイルバッテリーで充電していると、思ったより充電が進んでいないと感じることがあります。
その原因は、充電中にスマホが同時に電力を消費しているためです。
たとえば、動画を視聴したり、ゲームをプレイしていたりすると、それだけでかなりの電力が使われてしまいます。
特に高画質のストリーミングやグラフィック処理の重いアプリはバッテリーへの負担が大きく、供給される電力の大半をその場の消費に使ってしまいます。
その結果、バッテリーに実際に蓄積される電力はわずかとなり、見た目の充電率がほとんど上がらないという状態になるのです。
効率良く充電を進めたいなら、使用を控えるか、せめて画面をオフにして放置しておくことが望ましいでしょう。
スマホのバッテリー状態や設定が充電速度に影響する
スマートフォン本体の設定やバッテリーの健康状態も、充電の進み具合に影響を与える要素のひとつです。
最近のスマートフォンには、バッテリーの寿命を延ばすために充電速度を制限する機能が備わっている場合があります。
例えば、一定の時間帯は80%で一時停止し、ユーザーが使う時間に合わせて残りをゆっくり充電するという制御が働いていることもあります。
また、バッテリーそのものが劣化していると、高速充電時の発熱や過負荷を防ぐ目的で自動的に電流を抑える仕組みが作動します。
このような場合、いくらモバイルバッテリーやケーブルが高性能であっても、スマホが自ら制御をかけてしまうため、想定通りのスピードでは充電されません。
設定アプリからバッテリー関連の機能を確認し、最適化機能を一時的にオフにすることで改善することもありますが、その際はバッテリーへの負担も考慮する必要があります。
発熱などによりスマホが充電電流を抑えている
スマートフォンの温度が高くなると、内部の保護機構が働いて充電速度が意図的に抑制されることがあります。
これは「サーマルスロットリング」と呼ばれる制御で、バッテリーや内部チップの過熱による劣化や事故を防ぐために自動的に電流を減らす仕組みです。
たとえば、夏場の車内や直射日光の当たる場所で充電していると、わずか数分でスマホ本体が高温になり、通常のスピードでは充電されなくなります。
さらに、放熱性の低いスマホケースを装着している場合や、布団の中に置いている場合も熱がこもりやすく、充電効率を大きく下げてしまいます。
安全のためとはいえ、充電が遅くなる原因として見落とされやすいため、充電中はなるべく風通しの良い場所に置き、本体が熱を持ちすぎないよう注意しましょう。
本体かスマホかどちらの充電が遅いか見分けるポイント
充電が遅いと感じたとき、それがモバイルバッテリー側の問題なのか、スマートフォン側の問題なのかを判断するのは意外と難しいものです。
以下でその見分け方を解説します。
まずは充電中のデバイスを変えて試してみる
最も簡単で効果的な方法は、充電するデバイスを別のものに変えてみることです。
例えば、普段使っているスマートフォンがなかなか充電されないと感じた場合、そのモバイルバッテリーで別のスマホやタブレットを充電してみてください。
もし別の端末ではスムーズに充電が進むようであれば、問題は元のスマホ側にある可能性が高いです。
逆に、どの機器を接続しても充電が遅いのであれば、原因はモバイルバッテリー本体や接続機器の方にあると考えられます。
このように、異なる組み合わせで動作を確認するだけで、ある程度の原因特定が可能になります。
自宅に他の端末がある場合は、ぜひ一度試してみることをおすすめします。
出力・入力仕様の確認で原因の切り分けができる
充電の遅さに悩んでいる場合は、モバイルバッテリーとスマートフォンそれぞれの仕様を確認することも重要な手がかりとなります。
モバイルバッテリーには「出力(Output)」という表記があり、例えば5V/2Aや9V/2Aなどの形で書かれています。
一方で、スマートフォンのスペック表には「最大受電(入力)電力」が記載されていることがあります。
この2つを照らし合わせてみて、バッテリーの出力がスマホの要求する入力よりも低ければ、それが充電速度を制限する原因になっているかもしれません。
逆に、スマホが高電力を受け付けられない仕様になっている場合は、いくら高出力のバッテリーを使っても速度は上がりません。
出力と入力がそれぞれどの程度の数値かを確認すれば、どちらがボトルネックになっているかを判断しやすくなります。
スペックを確認する際は、公式サイトや製品の取扱説明書が参考になります。
モバイルバッテリーの充電を早くするために見直すべき機器と方法
モバイルバッテリーやスマートフォンの充電が遅いと感じた場合、機器の見直しが必要になることがあります。
ここでは、見直すべきポイントを具体的に解説します。
PD対応の高出力アダプターを選ぶ
充電時間を短縮したいなら、まず見直すべきは使用しているアダプターです。
特に、Power Delivery(PD)に対応したアダプターであれば、高出力で安定した電力供給が可能になります。
PD規格では最大で100Wまでの出力がサポートされており、スマホだけでなくタブレットやノートパソコンの充電にも対応できるモデルが多く存在します。
例えば、従来の5W出力のアダプターを使っていた場合、PD対応の30Wアダプターに切り替えるだけで充電時間が半分以下になることもあります。
ただし、アダプター側が高出力でも、接続先の機器が非対応であればその恩恵を受けることはできません。
したがって、出力の数値だけでなく、PD対応であるかどうかを確認したうえで選ぶことが大切です。
信頼できる急速充電対応ケーブルを使用する
アダプターを高性能なものにしても、使用しているケーブルがそれに見合っていなければ充電速度は伸びません。
実際には、ケーブルがボトルネックになっているケースも少なくありません。
特に、急速充電に対応するには、ケーブル自体が一定の電流に耐えられる設計である必要があります。
USB-C to USB-Cのケーブルでも、安価な製品では2A以上の電流を安全に流せないことがあり、その場合アダプターやバッテリーの性能が十分に発揮されません。
信頼できるメーカー製で、PDやQuick Chargeの規格に正式対応していることを明示しているケーブルを選ぶと、そうした問題を回避できます。
さらに、ケーブルの長さも重要な要素で、長すぎると電圧が低下しやすくなるため、必要最小限の長さに抑えるのが理想的です。
対応規格が揃ったバッテリー本体を選ぶのが重要
充電環境を改善したいと考えるなら、モバイルバッテリー本体の見直しも欠かせません。
多くの人が「出力」性能ばかりに注目しがちですが、実は「入力」性能も同じくらい重要です。
なぜなら、急速充電に対応しているアダプターやケーブルを使っていても、バッテリー本体の入力規格が古ければ、それ以上の電力は取り込めないからです。
たとえば、PD18W対応のアダプターとケーブルを使用していても、モバイルバッテリーが5V/2Aまでしか対応していない場合、最大10Wの充電にしかなりません。
その結果、フル充電に何時間もかかってしまうのです。したがって、購入時には「PD対応」「急速充電入力○○Wまで対応」といった仕様を確認することが非常に重要です。
入力・出力の両方に対応している製品を選べば、日常的な充電のストレスが大幅に軽減されるでしょう。
モバイルバッテリー本体やスマホの充電に時間かかるまとめ
モバイルバッテリーの充電が遅いと感じる場合、その原因はバッテリー本体・接続機器・スマートフォン側など複数に分かれています。
出力や入力の規格が合っていなければ急速充電は機能せず、どれだけ高性能なアダプターを使っても充電速度は改善しません。
また、ケーブルの規格不足やスマホの発熱、劣化したバッテリー状態も影響します。
こうした問題を解決するためには、PD対応のアダプターやケーブルを使い、対応規格が揃ったバッテリーを選ぶことが大切です。
正しい知識をもとに充電環境を整えることで、充電のストレスは大幅に軽減できます。